わが国の高速バス成長を象徴する、もう一つのキーワードが「パーク&ライド」である。
「フェニックス族」当時は、自家用車の普及が進んでいたとはいえ「一家に1台」であったから、自らのクルマを持たない彼らは、高速バスの停留所まで家族に送迎してもらっていたようだ。
だが、やがて地方部で「1人に1台」時代となると、自宅から自家用車で停留所まで向かい、そこで大都市行きの高速バスに乗り換える「パーク&ライド」が普及した。
高速バスにおけるパーク&ライドは、自然発生的に生まれたようだ。
地方部から大都市へ向かう高速バスは、市内(鉄道駅前や鉄道駅から少し離れた官庁街や繁華街)を回ってから高速道路に乗ることが一般的だが、インターチェンジ周辺や高速道路の本線上にも停留所が設けられていて、途中乗車することもできる(本線上の停留所は、当時の日本道路公団が、交通空白地域を減らす等の目的で設置したもので、バス事業者の判断によりそれを利用している。逆に利用されず放置されている例も多い)。
わずかでも利用があれば、という程度の目的で設置した途中停留所だが、やがて近隣市町村から自家用車でやってきて、周辺のあぜ道などに駐車して高速バスに乗り換える利用者が出てきた。クルマ社会化の進展により、出張や買い物で最寄りの大都市に出かける際、市内の渋滞を抜け鉄道駅周辺の駐車場にクルマを止めて鉄道に乗り換えるよりも、郊外の停留所でバスに乗り換えた方が、運転も楽だし時間も短縮できたのだ。
当初は近隣住民から違法駐車に対する苦情もあったようで、やがて自治体やバス事業者が停留所周辺に駐車場を整備するようになった。そういう経緯から、駐車料不要の場合もある。
徳島県、香川県など、パーク&ライドの普及が進んだ地域では、自治体やバス事業者が整備した駐車場では足りず、民間が広大な有料駐車場をビジネスとして展開している例もみられる。
フェニックス族と合わせ、我が国の高速バス利用が、いかに地方側在住者に偏っているかという点を象徴しているキーワードだ。
(高速バスマーケティング研究所代表)